ザ・スイッチ

「あるある」って重要よね! こんにちは、レプラコーンWakaです。

今回のひねくれ映画レビューは『ザ・スイッチ』です。

この映画は、

「13日の金曜日」風な殺人鬼(おっさん)と、被害者の女子高生が入れ替わってしまう

という「スプラッタ」「スラッシャー」映画の「あるある」を下敷きにした内容です。

ひとことで言うならば

「血しぶき系・青春ジュブナイル・ホームコメディ」なんです!

よくわからないって?

書いている自分も勢いで書いたから混乱中だけど、これからそれを掘り下げていきましょう。

『ザ・スイッチ』
<おすすめ度>
おっさん女子高生度★★★★★ 
血しぶき度  ★★  

 まずはストーリー

高校卒業を前に、ミリーは悩んでいた。1年前に父を亡くし、残された母が心配な彼女は、大学への進学希望を切り出せずにいたのだ。

そんな折、同級生が殺人鬼に惨殺される事件が発生。殺人鬼は高校にも侵入し、運悪くミリーは襲われてしまう。

しかしその時、雷雲が響き、気づいた時にはミリーの魂は殺人鬼の中に入っていた。殺人鬼が見つけた呪いのナイフのせいだという。

元に戻れるタイムリミットは24時間。果たして、ミリーは体を取り戻せるのか?

 出オチかと思いきや、その先が面白い!

この映画、「殺人鬼とヒロインが入れ替わる! 」ということでだいたい説明がつき、予告編からして出オチ感があるそんな「ジャンル映画」に見えます。

では、それ以上のことが起きないのかというと、実はそれ以外のところがちゃんと面白いんです!

女子高生の心が入った殺人鬼・ビンスボーンが、はじめは違和感があるんだけど、

見ているうちに、このおっさんがマジで女子高生に見えてくるんです…ホントだよ! 

ザ・スイッチ
女子高生マインドのおっさん(右) 公式サイトより

だんだんと彼女(?)の恋路を「がんばれ」って応援したくなるムービーマジック。

さすがの演技、さすがのキャリアと言えましょう。

…では、冒頭でお話ししたこの映画がなぜ「ホラーテイスト青春ジュブナイルホームコメディ」なのか。それはですねぇ…

 ①「そこそこ」なスプラッター・テイスト

ブッチャー役のビンスボーンとミリー役のキャスリンニュートン、二人が立っているポスターをみると、この女の子が大暴れするのかに見えます。

ザ・スイッチ

チェーンソーを持ったミリーが学園祭で大暴れ!

「アタイを倒したければ、フレディでも呼んできな!」

と言い放ち、血で血を洗う大虐殺!

惨劇は、あのブレインデッドを超える…!!! 

とかだったら別の意味で伝説になってたのだろうけど、そこまででもありません。

あと、ミリーの一人称も「アタイ」ではない。

スプラッタ描写は、建築学の先生(「はっきりしゃべれ」とか言ってくる、嫌なやつ)を、電ノコで真っ二つにしたり

チェーンソーを振り回して学校でいじめっ子を刻むことくらい。

個人的には高圧的なオッサンが大っきらいな人種なので、この辺は両手を上げて「やっちまえ」とエールを送る感じです。

でもま、ホラーな絵は一瞬しか出ないので、血がめちゃ苦手な人でなければ、大丈夫ではないかと思いますよ。

※ちなみに、ネタにした最強流血映画『ブレインデッド』はこちら。

  ②「めっちゃいい奴ら」のホームコメディー

引っ込み思案のミリーを支えるのは、黒人の女の子とゲイの白人男子。

この二人がとにかくいいやつらで、父を亡くしたミリーを元気付けつつも「自分を犠牲にしてまで人に合わせる必要はないよ」と、言いづらいこともきちんという真の仲間。

ザ・スイッチ友人
利発女子とゲイの友人。こいつら良いヤツ! 公式サイトより

ハイタッチからの別れの挨拶や、車で走るシーンなども、自然な「仲間感」がにじみ出てて、この三人が絡んでいるところは何だか良いのよ

「お前、友だちに恵まれてよかったな…」と、親目線になるくらい。

あと、このゲイの子もなかなか楽しいんです。

自宅で「あること」が母親に見つかり、ごまかそうとした時のやり取りが秀逸。

「ママ!ぼく、ストレートになったんだよ!」

「あんたに限ってそれはないわ! なにか隠してるわね」

ママ! すげえよあんた。

ある意味息子をすごーく信頼してるとも言えますね。

  ③そして「少女が成長する」青春ジュブナイル

主人公のミリーは、引っ込み思案の奥手な少女。

意地悪されても言い返せず、いつも貧乏くじを引いている…。母親との会話も、無言でうなずくばかり。

しかしそんな彼女が殺人鬼と入れ替わることで、徐々に変化が表れます

作中、殺人鬼(ミリー)に、母親が悩みを打ち明けます。夫を亡くし、毎日不安なこと、長女は仕事に逃げ、次女からも大学進学を機に見放されてしまうのではないか、と。

母の告白にミリーはこう答えます。「大学にいってもひとりにはならないさ、その子はどこにいっても君の娘なんだから」と。

壁越しに交わされる母子(おっさん)の会話は、古典的な絵面でありつつも、なんかグッと来るんですよ。

そんな心の変化があった一方、強靭な体を得たミリーは、いつも苛めてくる男子に「仕返しができた」と、嬉しそうに話します。

しかし、片想いの男子からはこう指摘されます。

「強さとは心の強さだ。君は弱くはない。強いはずだよ。」

ありきたりだけどこの言葉、

夜の車中で、おっさん(女子高生)に、男子高校生が言ってるんだよ。

コイツ、なんたるイケメンだ!

ザ・スイッチ
イケメンをお持ち帰りしたおっさん。 公式サイトより

この言葉を受け、主人公は本当の強さで悪と対峙することになるのです。


そんなこんなで楽しい102分。

「ホラーテイスト・青春ジュブナイル・ホームコメディ」の『ザ・スイッチ』は、「殺人鬼との入れ替わりで成長を描く」、奇妙なジュブナイル映画でした。

この以外な面白さ。ハマる人にはハマるんじゃないかな。



『ザ・スイッチ』公式サイト 
2020年製作/102分/R15+/アメリカ
原題:Freaky
監督:クリストファー・ランドン
CAST:ブッチャー役 ビンス・ボーン ミリー役 キャスリン・ニュートン ほか